第24章 想いを、繋ぐために
スケプティック&ヴォイドside
郡訝山荘──その地下深く。
仄暗い蛍光灯が灯る無機質なフロアに、今日も時間の流れはなかった。
スケプティックは、並んだ端末の前に座っていた。
いつものように、カチャカチャと無意味な速度で打ち込まれるキー。
ヴォイドは壁際に寄りかかり、身動きひとつせず主を見守る。
そして、その間。
透明な檻に囚われた少女が、一人、椅子に座っていた。
感情の抜け落ちた眼差し。
その心は、すでに何度も何度も分解され、組み替えられている。
言葉を発することも、動くことすら、今の彼女には許されていない。
——いつもと、同じ日だった。
だが次の瞬間、その“同じ”は爆音によって打ち砕かれた。
ドン──!!
地鳴りのような衝撃が、地下まで響いた。
蛍光灯が微かに揺れ、壁の向こうでアラームが鳴り始める。
「……何だ?」
スケプティックの手が止まり、
即座に複数のモニターが呼び出された。
その中で、いくつものヒーローの姿が映し出される。
――エッジショット、シンリンカムイ、ミッドナイト
――幾人ものプロヒーローたち。
「……クソ共め」
スケプティックは思わず声を漏らした。
顔が引きつる。だが、それは恐怖ではなかった。
「……チッ、計画は一ヶ月先のはずだったのに……」
唇を噛むようにして呟いたあと、
彼はゆっくりとモニターから目を逸らし、檻の中の少女を見る。
そして、怪しく、嬉しそうに微笑んだ。
「……まあ、いいさ」
「“前倒し”になっただけのこと」
立ち上がったスケプティックが、ゆっくりと振り返る。
「ヴォイド……彼女を連れて行け」
「そして、ヒーローたちを迎え撃て。ここが開戦の地だ」
静かに、ヴォイドが頷いた。
一歩、檻へと近づく。手をかざすと、拘束装置が解かれていく。
少女は、抵抗もせずに立ち上がった。
そのまま、ヴォイドの背に並ぶようにして歩き出す。
スケプティックは、モニターを一つ一つ見送るように睨みながら、
唇を吊り上げて呟いた。
「さあ、ヒーロー共。驚くがいい……」
「**“神の器”**は、今ここに在る」
爆音の余韻を背に。
ヴォイドと少女は、地上の激戦へと、静かに歩き出していった。