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【ヒロアカ】re:Hero

第23章 空白の檻




「うわぁああああああああああ!!!」

トゥワイスの叫びが反響する。
ドアが閉まった瞬間、それまで張りつめていた空気が一気に崩れた。

「なあなあなあ!! 見たよな!? 見たよなさっきの!! 銀髪に、碧眼に、あの顔ッッ!! 間違いねぇよな!? 想花だったよな!? 違うって言ってもムリだぞ!? 言わせねぇからな!?」

マスクを脱いでは、被り部屋の中をぐるぐる歩き回る。
テンパり具合は最高潮だ。

「確かに、確かに俺ら知ってたさ! カゼヨミが想花だって! 
なぁ!? でもよォ、まさかあの姿で今日いるとか!! つーか、何だあの目! 感情ゼロ!! あれはもう……」

トゥワイスの声が震える。マスクを深くかぶり直して、振り返った。

「なぁ、あれ……俺らが知ってる想花じゃなかったよな……? なぁ……?」

静かにソファに腰を下ろしていたスピナーが、目を伏せたまま呟く。

「……まぁ、でも良かったんじゃねぇか?」

「うん、私もそう思います!」
トガが微笑みながら、椅子に腰かけ脚を揺らす。
「あのままの方が安全に、こっち側に居てくれます」

「……こっちにいるってのは、嬉しいよ、嬉しいけど!!」
トゥワイスが大声で返す。
「でも、でもよォ! 俺らの知ってる想花は、あんな感情死んだ目しねぇんだよ! 笑ってたじゃん! ツッコんでくれたじゃん! ……怖いよ、俺……なんか怖ぇよ……」

その視線が、無言のまま窓辺に立つ荼毘と、腕を組んで沈黙しているコンプレスへと向く。

「なぁ……お前らは……怖くねぇのかよ……あんなふうにされたの、見て……」

荼毘はしばらく黙っていたが、やがて短く吐き捨てた。

「……他の奴に、アイツが壊されんのは気に食わねぇ」

その言葉に、トガがくすっと笑いながら、斜めに首をかしげた。

「それって〜嫉妬ですか? ねぇ荼毘くん、それって嫉妬ですねぇ? 可愛い〜♡」

「は、引くわ」
スピナーがぼそりと呟く。

舌打ちがひとつ。
荼毘は、トガを無視しソファに腰を下ろした。

コンプレスは帽子を指先で転がしながら、低く息をついた。

「……いや、俺は……彼女らしくない姿を見るのが、正直、つらい」

その言葉に、誰もが押し黙った。

かつて笑っていた少女の幻が、それぞれの胸を刺すように揺らしていた。
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