第22章 繋がる鎖、壊れる仮面
荼毘side
逃げねぇ。
叫びもしねぇ。
睨みもしねぇ。
ただ黙って、そこにいる。
抵抗もしねぇで、俺の言葉を──受け止めてやがる。
なぁんだよ、それ。
何がしたい。
どうしたい。
俺に従ってるんじゃねぇってことくらい、見りゃわかる。
服従でも屈服でもない。
──あいつは、もう覚悟してやがる。
“誰かを守るために、ここに残る”って決めた顔だ。
まるで、“痛みを選んだやつ”の目だ。
……クソだ。
なぁにが、ヒーローだよ。
なにが「誰かのために」だ。
そうやってまた、自分のことを後回しにして、
黙って全部、飲み込もうとしてんのか?
“誰も壊れない道”なんて──
もう、とっくにこの場所にはねぇのに。
なのに──
それでも、動かねぇ。
動かないで、
俺の目を、ただ静かに見てる。
……だから、
──腹が立った。
喉の奥が焼けるくらいムカついて、
けど、吐き出すのはいつも熱じゃねぇ。
“そうされると、俺が悪者みてぇじゃねぇか”
俺はただ、
お前を引きずり込んだだけだろ。
それなのに。
お前はもう、
自分の意思でここに立ってやがる。
“全部知ってて、それでもだ”
だから、擦れる。
その静けさが。
その覚悟が。
お前が「俺に壊される未来まで」計算してるみてぇで──
どうしようもなく、擦れるんだ。
なぁ、わかるか。
俺は、“そういう顔”がいちばん嫌いだ。
なのに、
いちばん目を逸らせねぇ。
壊れねぇなら、壊してみてぇ。
壊れたあとでも、立ち上がるなら──
もっと、沈めてやりてぇ。
そんな風に思ってる時点で──
もう、俺はとっくに、お前に負けてる。
……ああ、ほんと、気に入らねぇ。