第22章 繋がる鎖、壊れる仮面
もう──隠していられない。
私は一歩、前へ。
「偽り」を脱ぎ捨てるように、本来の姿へと戻った。
銀の髪が、蒼の瞳が、静かに空気に溶けていく。
その姿を見た瞬間──空気が凍ったようだった。
「……っ」
スピナーが、小さく息を飲む。
「そんな、嘘……」
トガが、呆然とした声で。
「ヒーローだった……のか……?」
トゥワイスの問いに、私は頷けなかった。
ただ、目を逸らさずに見つめ返した。
──その時。
「……なあんだ」
静かな声が、笑った。
「やっぱり、そうだったんじゃねぇか」
荼毘だ。
その目が、焼けつくような光を帯びている。
「“カゼヨミ”なんて名前、雑すぎて笑えると思ってたんだ。
でも中身が“お前”だったってなら、納得だわ」
嬉しそうに笑っている。
本当に──心の底から、そう見えた。
「ずっと欲しかったんだよ。
ヒーローとして、正義を掲げて、
“誰かのために”なんて嘘を信じてる──
……お前みたいな、光そのものみてぇな存在が、俺の前に堕ちてくるのを」
狂気。
でも、それは熱を持っていた。
まるで、願いみたいに。
私は、構えた。
戦いたくなんてない。
でも──捕まるわけにもいかない。
このまま彼らの手に落ちるわけにはいかない。
『お願い、来ないで……』
声が震える。
手も、心も、きっと同じくらい震えていた。
『……お願いだから……っ…!』
そんな私の顔を見て、荼毘はうっとりとした目をした。
「いいね、その顔」
「泣きそうなくせに、逃げねぇのか。……ほんと、綺麗だよ、お前」
──怖い。
だけど、悲しかった。
何が本当で、何が嘘で、
私は誰としてここにいたのか。
何も答えられないまま──私は立ち尽くしていた。
「……おっと」
その空気を、ふっと変えたのは──
「少し、待ちなよ」
コンプレスだった。
一歩前に出て、荼毘との間に割って入る。
「彼女の“立場”も、理解してるつもりさ。
……そのうえで俺の話も聞いてくれないか?」
その声は穏やかだったけれど、はっきりと私を“庇う”ものだった。
私は、彼の背を見て──ほんの少しだけ、肩の力を抜いた。