第22章 繋がる鎖、壊れる仮面
……気づけば、頬を伝っていた。
ぽたり、ぽたりと、
ジェンガのピースに音もなく落ちる涙。
え……? なんで、って思ったのに。
止めようとしたのに、止まらなかった。
「……っ、え、お前……?」
誰より先に気づいたのは、スピナーさんだった。
驚いたような、どこか焦ったような声。
「……泣いて、んのか?」
トゥワイスの声は、どこか震えていた。
それは驚きとも、困惑とも違う、
もっと根っこから揺さぶられたような“動揺”だった。
その声に反応して、周りの視線が一斉に私に集まった。
『……っ…ごめん、なさい……』
慌てて袖で拭おうとしたけれど、うまくいかなくて。
それでも無理に笑おうとしたら、逆に声が震えてしまった。
『…皆さんのこと、ちゃんと知らないくせに……
勝手に、勝手に涙なんか……ごめんなさい』
言いながら、また涙がこぼれる。
情けない、こんなふうに泣くなんて。けれど──止まらなかった。
――そんなとき。
「……泣くなんて、あなたヴィランらしくないです」
トガちゃんが、小首を傾げながら笑った。
どこかいたずらっぽくて、でもその目はほんの少しだけやさしくて──
嬉しそうな色が、ほんのりと滲んでいた。
「でも、ちょっと……嬉しいです♡」
その笑みに言葉を返せなくて、私はただ、うつむいた。
ふと、隣からふわりと何かが差し出される――
「泣かれると、俺もどうリアクションしていいか困るんだが……」
照れくさそうな、でもどこか呆れたような
優しい所作で、ハンカチを持つコンプレスの姿。
彼の仮面越しの声は、どこかいつもより柔らかかった。
『……ありがとう……っ』
彼らの隣にいることが、こんなにも温かくて、
そして、こんなにも苦しいなんて──知らなかった。