第22章 繋がる鎖、壊れる仮面
わいわいとした空気が、どこか優しい沈黙に変わっていった。
「……じゃあ、オレからでいいか?」
静かに、けれどしっかりとした声だった。
『……スピナー』
「いや、別に大したことじゃねぇよ」
そう言ったスピナーは、照れ隠しなのか首の後ろをかいて、
けれどその目は、少し遠くを見ていた。
「オレ、小っせえ頃から“これ”だったからな。トカゲみてぇな顔、皮膚、手足。
最初は“珍しい”って笑われて……それがいつしか、“気持ち悪い”になった」
誰も口を挟まなかった。
「学校じゃ避けられて、歩くだけで道あけられて、
“近寄るな”って張り紙貼られたこともある」
静かに、だがはっきりと続いていく声。
「それでもヒーローが好きだったんだよ。……昔は、な」
トゥワイスがふっと息を飲んだ。トガは唇を噛んで目を伏せた。
「でもさ、ヒーローって“救ける人”だろ?
“誰でも助ける”って顔してさ、俺のことは見ても見ぬふりだった。
いや、もしかしたら見えてすらなかったのかもな。……“ただの化け物”にしか見えてなかったんだろ」
『…………』
私は何も言えなかった。ただ、じっと彼の言葉を受け止めていた。
「そんなときだよ。“ステイン”を見たのは。
初めてだった。外見も個性も関係なく、“信念”だけで語る奴。
──正義って、あんなふうに叫べるもんなのかって、思った」
スピナーの拳がゆるく握られているのが見えた。
「オレ、変わりたかった。誰にも振り返られないまま終わるのが、怖かった。
何かを遺したくて、誰かの役に立ちたくて……」
ぽつり、と落ちたその言葉に、主人公は小さく目を伏せた。
「でも結局、ヒーローにはなれなかった。
だからせめて、ステインの意志だけでも繋げたかった。
“ヴィラン連合”ってのが、その場所だった。──オレにとっては、な」
静かな、けれど澄んだ余韻が、部屋に満ちた。
“ただの化け物”なんかじゃない。
誰よりも真っ直ぐに、自分を受け入れようとしてきた人の言葉だった。
ジェンガのピースをまた手に取りながら、
誰もそれを崩そうとはせず、ただその言葉の重みを、心に積み重ねていた──