第21章 君に贈る、ひとときの奇跡
ホークスside
夜の冷たい風が肌を刺す。
だけど、その冷たさをかき消すように、想花の温もりが俺を包み込んでいた。
やっと――やっと、この腕の中で感じる彼女のぬくもり。
言葉はなくても、胸の奥で伝わる想いがあふれてくる。
彼女の鼓動が静かに響き、まるで時間がゆっくりと止まったようだった。
何度も何度も想いを巡らせて、遠くから見守っていたこの瞬間のリアルさに、胸がいっぱいになる。
ちらりと見えた、コートの隙間からのぞく小さなサンタの衣装。
こんなに可愛い彼女を前に、どうしても言葉にはできなくて――その想いが頬をじんわり熱くさせた。
そっと手を伸ばし、柔らかな髪に触れる。
指先から伝わる温もりが、彼女に届いてほしいと願う気持ちが自然と力になった。
心のなかで繰り返す。
(会いたかった――ずっと)
そっと頬に触れる指先。
冷たい夜風にさらされた肌に触れるその温もりは、彼女の息遣いまで感じられるようで。
(触れたかった――もう一度)
手はゆっくりと髪へと滑り、柔らかな髪の感触を確かめる。
その動きに、彼女は少しだけ顔を背けて、恥ずかしそうに目を伏せた。
(傷つけてしまって、ごめん――ずっと守りたかったのに)
彼女の腕がぎゅっと絡みついてきた。
その温もりと言葉にならない“ごめん”を、全身で感じ取って――
「何もいらない」と、俺は心からそう思った。
止められずに唇を重ねる。
声にはできなくても、このキスがすべての想いを伝えてくれる。
離れていた時間を溶かすように、静かに、ゆっくりと――重なり合った。
冷たい夜空の下、俺たちだけの世界。
そこにあったのは、静かで、あたたかくて、胸が震えるほどに深い幸福だった。
小さな吐息が、俺の胸に落ちてくる。
彼女の鼓動も、震える手のひらも、すべてが俺の心を満たしていく。
「これからも、ずっと、そばにいる――」
心の奥で、そっと誓いを立てた。
夜空の星たちが、まるで祝福するように瞬いている気がした。
未来がどんなに暗くても、もう怖くはない。
この手に、彼女がいるから。