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【ヒロアカ】re:Hero

第6章 また明日


濃い煙が視界を覆い、火の粉が舞い散っている。

『っ……ここは……っ!』

災害訓練用の森林ゾーン。木々の間から火が燃え上がっていた。
どうやら、私はひとりここに転送されてしまったらしい。

『他のみんなは……っ。今は、とにかく自分の身を守らないと……!』

息が浅くなり、パーカーの袖で口元を覆う。
熱気と煙で、呼吸は苦しい。

足元の焦げた落ち葉を踏みしめながら、
なんとか移動を試みたその時――

「おやおや?女の子ひとりで心細かったかい?」

甘ったるい男の声が突然耳を打った。

視界の先、木陰から黒いシルエットが現れる。

長身の男。スーツ姿なのに、どこか不潔な印象を纏い、
右腕だけが異様に膨らみ、ぐにゃりと歪んでいた。

『……あんた、ヴィラン、だよね?』

私は静かに構えた。

「そうそう。オレはねぇ、君みたいな子が大好物なんだよ」

男の口元がにやりと歪むと同時に、右手が空を切った。

その瞬間、目の前の木々がねじ切られたかのように折れ曲がる。

空気が歪み、幹がぐにゃりと崩れていった。

『……個性、重力操作……?空間をねじってる……?』

「気づいた?頭いいね。でも関係ないさ。ほら、潰れちゃえ!」

男の右手がこちらに振り下ろされる。

『っ……来るっ!!』

咄嗟に身体をひねってかわすと、
後方の地面が一瞬でえぐられた。

土煙と火の粉が舞い、熱と衝撃が髪をなびかせる。

私はすかさず距離を詰め、男の懐へ――

『っせいっ!!』

繰り出した蹴りが男の顎を捉える。

だが――

「……ぐふっ。ははっ、効いたけどさあ……」

膨らんだ腕が私の脚をがっちり捕らえた。

『……っく!』

「捕まえたぁ!」

歪んだ重力が私の身体を圧迫していく。

視界がぐらりと揺れた。

『……まだ……倒れるわけには……っ!』

――私には、守りたいものがある。

まだ、あの声の正体にも辿り着いていない。

だから。

(まだ、負けられないっ!!)
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