第6章 また明日
施設の扉が開くと、目の前に広がる景色に息を飲んだ。
『すごい……こんなに大きくて、リアルなんだ……』
火山の煙が立ち上り、濁流がうねり、地震で崩れた建物の残骸が積み重なっている。セクションごとに区切られたこの人工空間は、想像をはるかに超えていた。
その中心で、宇宙服のようなスーツを身にまとったスペースヒーロー・13号が私たちに語りかける。
「みなさん、ようこそUSJへ!」
電子的な声にしてはどこか柔らかくて、親しみやすい。13号の人柄が滲んでいるみたいだ。
「ここは“ウソの災害や事故ルーム”。地震や火災、土砂崩れなど、あらゆる災害を想定した救助訓練を行う場所です」
小さく息を飲み込む。
『救助……。これが、私の目指すヒーローの姿なんだ……』
『悲しむ人を少しでも減らすために、私はここで学ばなくちゃ』
13号の説明が続く。
「ヒーローの仕事には戦うだけじゃなく、“救う”ことも含まれる。どんな時でも冷静に、迅速に動けるように……」
その言葉のあと、不意に背筋が凍るような感覚が走った。
教室にいたときとはまるで違う、重くて湿った空気が一気にこの場所に満ちた。
『……!?』
思わず振り返ると、13号の声が途切れている。相澤先生が静かに前へ出た。
「ひとかたまりになって、動くな!!」
低く鋭いその声には、本物のプロヒーローとしての覚悟が宿っていて、誰もが背筋を伸ばした。
視線を施設の中心に向けると、黒い渦がゆがみながら広がっていくのが見えた。
『なに、あれ……』
そこから、いくつもの不気味な人影が浮かび上がる。
黒いマントをはためかせる男、煙のようなものを操る女、異形の姿をした存在。そして、その中央には、身体中を手が覆う禍々しい影が。
その瞬間、空気が凍りついた。
「ヴィラン……?!」
誰かの震えた声が聞こえる。
世界が一変したような緊張感の中、私の心臓が激しく打ち始めた。