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【ヒロアカ】re:Hero

第20章 仮面と素顔



通話がぷつりと切れたあとも、俺はしばらくその場で動けなかった。
スマホを握りしめた手のひらに、じんわりと冷や汗がにじむ。

学校にも、寮にも――想花はいない。
それはもう、たった一人の“もう一人の潜入者”が、間違いなくあいつ本人だということだ。

情報の欠片が頭を駆け巡る。

消されたのかもしれない。
殺されたのかもしれない。

――そんな最悪の可能性に、どうしても心が押しつぶされそうになった。

 

だが、あいつのことを思い出した。

風を纏う小柄な女――“カゼヨミ”という名の、不思議な存在。
手袋越しの右手のあの指輪。
そして、俺に気づかれないように、逃げるように駆けていった、あの背中。

(……あいつは、俺から逃げたのか?)

その瞬間、胸が痛んだ。
逃げなきゃならなかった――それはあいつが今、どれだけ危険な場所にいるかの証明だった。

 

(あいつは……生きている)

胸の奥で、確信に近い熱い想いが沸き上がる。

どんなに危険な状況にあっても、あいつは――ここ、俺のすぐ側にいる。

その事実が、恐ろしくもあるけど、同時に揺るぎない心の支えになった。

 

「想花」

震える声で呼ぶ。

いまはまだ会えなくても、必ず見つけ出す。
守りたい、守らなきゃいけない――誰よりも近くにいるあいつを。

 

(公安のやり方に、裏切られた気持ちもある)
(でもそれ以上に、あいつを守るために俺は何だってする)

 

揺れる想いと決意が、交錯する。

 

“守る”って――こういうことだ。

大切な誰かのために、俺が強くならなきゃ意味がない。

 

そう、俺は覚悟を決めた。

想花を、必ず守り抜くと――。
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