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【ヒロアカ】re:Hero

第20章 仮面と素顔




彼女の肩をそっと支えて、皮膚のふくらみに指を当てる。
服の奥、まだ幼さを残す身体に――そんなものが埋まってるのが、本当に腹立たしかった。

「いくぞ。深呼吸して。……大丈夫だ、俺がやる」

声はできるだけ穏やかに。

そして、ゆっくりと“圧縮”をかける。
装置の輪郭に沿って、金属だけを潰すように。
なるべく皮膚を傷つけず、でも確実に消していく。

 

「……っ」

彼女の肩が、かすかに震えた。
圧縮の熱が、肌に伝わったせいか――
埋め込まれていた部分が薄く裂けて、血がにじむ。

「っ、ごめん……」

俺はすぐに自分の上着の内ポケットから、
予備で持っていたガーゼを取り出し、そっと当てる。

滲む血は、ほんの少し。

それでも――彼女が必死に泣くのを我慢しているのが、伝わってきた。

「大丈夫、ちゃんと全部消えた。……もう、繋がってねえよ。あいつらとは」

それがどれだけの意味を持つか、わかってる。
この一つの装置を外すってことは、彼女にとって、
“檻の中から出る”ことと同じだ。

自由になった分、逃げ場も消える。

それでも、選んだのは彼女自身だった。

 

「……偉いよ、お前は。ほんとに」

ガーゼを押さえながら、ぽつりと呟いた。

泣き顔を、俺には見せたくなかったのかもしれない。
だけどそれでも――

この子は、もう十分すぎるほど、戦ってる。

 

ほんとはもっと早く、誰かが守ってやるべきだったんだ。

 

(……間に合ったか?俺は)


少しでも、あの震える肩の支えになれたなら――
ヴィランでも、こいつにとっての“味方”になれたなら。
そう思って、そっと手を離した。
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