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【ヒロアカ】re:Hero

第20章 仮面と素顔


Mr.コンプレスside

「……っ、はあ……」

苦笑いの奥に、どうにも処理できない感情が渦巻いていた。

彼女が見せたのは、まだ未成熟な体の、心臓のすぐ上――
そこに埋め込まれた、黒い金属片。

明らかにただの装飾じゃない。
これは……監視用の装置だ。追跡型、もしくは生体情報記録型。いや、両方かもしれない。

彼女の表情は、どこか吹っ切れたようで、けれど、傷だらけだった。

さっきまで泣いていた子供が、必死に強がって立ってるだけの顔だった。

『……ねえ、助けた借り、ひとつ返して』

そう言って、笑おうとしたその口元が、震えてたのを、俺は見逃さなかった。

 

「まいったな……」

誰に聞かせるでもない、そんな言葉が零れる。

まいったよ、本当に。

公安がどんなやり方をしてるかなんて、想像はついてた。
だけど――現実として、目の前にいる少女の体に、それを見せられて。
思ってた以上に、堪えるもんだな。

 

(まだ高校生だぞ、お前……)

ほんの数ヶ月前まで、友達と制服着て、学園祭がどうとか言ってたような子が――
なんでこんな世界で、こんな目に遭ってる。

こんなもん埋め込まれてまで、命がけで誰かを守ろうとしてる。

ふざけてるだろ、公安。

 

正義を掲げてる連中がやってることの方が、よっぽどヴィランじゃねえか。

 

彼女が視線を逸らして、小さく俯いた。

恥ずかしさか、戸惑いか、それともまた泣きそうになったのか――

その肩が、ほんの少しだけ震えた気がした。

 

俺は、何も言わずに膝をついて、そっとその震えに触れないように、手を添えた。

「圧縮するぞ、痛みは最小限にしてやる……でも、少し我慢してくれ」

 

こんなことでしか、守れない自分が悔しい。

けど、それでも今だけは――
ヴィランじゃなく、“迫 圧紘”として、
この子の背中を、支えてやりたかった。
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