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【ヒロアカ】re:Hero

第20章 仮面と素顔


想花side

 

朝なのか、昼なのか、もはやわからない廊下。
空気はぬるくて重くて、時計の針なんてここには存在しないみたいだった。

その無機質な通路の先で、また今日も、予想通りに――

 

「よっ!カゼヨミちゃーん!!」

 

トゥワイスが現れた。
ひとりで静かに行動しようとしていた私の前に、あまりにも自然に、何のためらいもなく。

『……何か用ですか』

「用?あるさ!超あるさ!“仲間”の顔見に来たの!」

 

あの日以来、こうして彼は本当によく絡んでくる。
トガがいない時も変わらない。

私は何も返さず、ただ小さく息を吐く。

すると彼は、ふと思い出したように言った。

 

「あ、ちょうどよかった!今日お前に紹介したいやついたんだ!」

『……紹介?』

「そうそう!仲間としてちゃんと顔合わせしとこうぜ!」

 

その言葉に、一瞬だけ眉をひそめる。
いやな予感が、首筋をなぞった。

そして――それは、あまりにも唐突に、すぐ背後から訪れる。

 

「……よっ」

 

聞こえたその声に、脳が一瞬で止まった。

 

振り返らなくてもわかる。

忘れようとしても、忘れられるわけがない。

……この声を、私は知っている。

 

『…………』

足が動かない。
顔が上げられない。
頭の奥が、真っ白になる。

そんな私に気づかず、トゥワイスは朗らかに続けた。

 

「カゼヨミ!紹介するぜ!こいつが“ホークス”!」

「すげぇんだぜ!速くて強くて、めちゃくちゃ働き者なんだ!オレらの期待の新人!しかも、No.2ヒーローなんだぜ!」


(――ホークス、だって)


心臓が跳ねた。

逃げたくても逃げられない。
見たくなくても視界の端に入ってくる。

“あの人”が、すぐそこにいる。

 

「ホークス!こっちはカゼヨミ!すごいんだぜ!強くてクールで、ちょっとツンデレだけど本当は優しいんだ!」

『……っ』

 

最悪の紹介を背に、私はただ、動けずにいた。


――この場所でだけは、会いたくなかった。


(……気づかないで。お願いだから、気づかないで)
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