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【ヒロアカ】re:Hero

第20章 仮面と素顔


想花side

重い空気の中を歩く足音だけが、やけに響いていた。

廊下の先は、いつもより暗い。
灯りは落とされ、空間の輪郭が曖昧になるような、そんな冷たい影の中を進んでいく。

隣にはトガ、後ろにはトゥワイス。
そして少し前を歩くのは、スピナーとMr.コンプレス。
さらに後ろにスケプティックとトランペットがいる。

無言の行列。

誰もふざけないし、じゃれもしない。
さっきまでのお寿司の空気が、嘘みたいだった。


薄く光が差す。
その先に開けた空間は、広くて、ざらついたコンクリートの床。

階段状に並ぶ鉄骨の手すり、その下にうごめく、数え切れない兵士たちの影。

――異能解放軍の戦士たち。

視線が一斉に私たちに向けられた気がして、無意識に息を飲む。

そのとき、誰かが耳元で囁くように言った。

「……来たな。始まるぞ」

 

上段――わずかに高い位置に設けられた壇上には、
黒いスーツをまとった死柄木弔が椅子に腰かけ、両肘をついてじっと前を見据えていた。

その隣で、堂々とマイクを握る男――リ・デストロ。

彼の顔は、妙に晴れやかだった。
そして、声が、響く。

 

「――我々は、今日この瞬間をもって」

「異能解放軍と、ヴィラン連合を統合し、」

「新たなる名の下に、次なる革命へと歩みを進める!」

 

一斉にどよめきが広がる。

その声に、私の心もざわつく。

言葉の波の中で、自分がどこに立っているのか――わからなくなる。

この場所で、顔を見られても問題ないように、
私はいつもより深くフードを被っていた。

でも、手袋越しの指先だけは、しっかりと隠しきれない願いを抱えていた。
 
「そして――新たなる行動隊長を、ここに発表する!!」



壇上のスピナー、コンプレス、トガ、トゥワイス……
そして次に、私――カゼヨミ。

一歩ずつ、みんなと肩を並べて立つ。

視線が一斉に私に集まるのを感じる。
誰もが新顔の“風使い”に注目している。

でも、私はただ静かに前を見据えた。
ここで立つ意味を、胸に刻みながら。
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