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【ヒロアカ】re:Hero

第5章 交わる唇、揺れる想い


相澤side

街灯がぽつりぽつりと灯る、静かな夜の街を一人歩く。

雄英での侵入騒ぎは、幸いにも生徒たちに大きな被害はなかった。
だが、あの場に星野がいたと聞いてからというもの、胸の奥にざわつくものが消えずにいた。

(ただ、確認したかっただけだ。…それ以上の理由は、ない)

そう自分に言い聞かせるように思考を切り替えながらも、足は自然と彼女のアパート前へと向かっていた。

そして、ふと立ち止まったその場所で、目に映った光景に息を呑む。

淡い外灯の灯りの下、星野が一人の男子生徒と向き合っている。

(……轟か)

表情を崩すことなく、ただまっすぐに佇む彼の姿に、何か深い迷いが宿っているのが見て取れた。

次の瞬間、彼の手がそっと彼女の頬に触れ、柔らかな唇が重なる。

(……おいおい)

普段は厳しく、言葉数も少ない彼の、ほんのわずかな動きに、俺は思わず目を見開いた。
そして、ため息を静かに夜風に紛れさせる。

彼がゆっくりと背を向けて去っていき、残された星野は頬を赤く染め、放心したように空を仰いでいた。

(……恋か。早いもんだな)

口には出さず、胸の中でつぶやいたその言葉に、わずかな苦笑いが混じる。

守りたいと思う。教師として、そして一人の大人として。
だが、それだけではない何かが胸の奥でざわついているのも確かだった。

少し冷たく感じる風に身をすくめながらも、俺はふと立ち止まった。

(……ま、俺の出る幕じゃねぇな)

そうつぶやいて背を向けると、コートのポケットに手を滑り込ませた。
タバコの箱に手をかけたが、ふと考え直す。

(……せっかく“青春”ってやつを見せてもらったんだ。煙なんか、いらねぇか)

その思いで、タバコはポケットにしまい込み、静かに夜の道を歩き出した。
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