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【ヒロアカ】re:Hero

第19章 交差する影、歪む真実




「……“どこ”から出たんですか?」

ホークスの問いに、室内の空気が張り詰めた。
一瞬だけ、誰かの呼吸音が止まったような気さえする。

「……信頼できる情報源だ。それ以上は開示できない」

「……公安の中でも、俺はかなり“中”の立場のはずなんですけどね?」

静かに返すホークスの声音には、刺すような鋭さが滲んでいた。

「……君の任務は、あくまでヴィラン連合の内部情報収集だ。
情報の出処は、任務遂行に必要な範囲で伝える。――それが公安のルールだ」

理屈は通っている。
だが、それは“そう答えるべきだと準備された答え”のように聞こえた。

ホークスは小さく息を吐き、片手で前髪をかき上げる。

(……なんでだろ。妙に、引っかかる)

「ふぅん……」

背もたれに深く体を預けながら、視線だけを泳がせた。

(俺の情報網にもまだ届いてない動き。
しかも、異能解放軍の中枢にまで接触してるって……)

口に出せない。

でも――
“誰か”の顔が、頭をよぎった。

(……まさか、な)

あいつが、そんな場所に――

「ホークス。君の任務は変わらない。
死柄木弔と接触を続け、組織の核を把握しろ。
そのためにも、君には“信頼される立場”でい続けてもらう必要がある」

言い換えれば、“裏切るな”ということだ。

わかってる。
公安はそういう組織だ。
誰が味方で、誰が敵か――そんなもの、とっくに曖昧だ。

(……でも)

一度芽生えた違和感は、簡単には拭えなかった。

「了解です。じゃあ……情報提供、ありがとうございます」

いつものように柔らかく笑って席を立つ。

そのまま踵を返して、部屋の外へ。

ドアが閉まった瞬間、背中の筋肉が僅かにこわばった。

(……絶対、なにか隠してる)

部屋の奥でまだ誰かが話していた。
けれどもう、耳には入っていない。

ただ静かに、心の中で誰かの名を思った。

(……“おまえ”じゃないことを願うよ)
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