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【ヒロアカ】re:Hero

第19章 交差する影、歪む真実


Mr.コンプレスside


気づけば、追われていた。

逃げる。
囲まれる。
また逃げる。

(……いやいやいや、待て。ちょっと待て)

何かの手違いだ。
というか、完全にこっちは非戦闘員だぞ?
この個性でどうしろと……!

「ちょっ、君たちちょっと冷静に――!うわッ!」

氷が地面を割り、熱が空を焦がす。
間一髪でよけたつもりが、マントの裾が焦げた。

(は〜い、もうだめです!)

どう考えてもここは自分がいる場所じゃない。
なのに、戦場のど真ん中でぐるぐる回ってるって、どういうことだ。

 

「ったく……オレの芸術性を発揮する暇もないとはな……!」

しっかり叫びながら、逃げながら、
なぜか全力で“生きようとしていた”。

 

そして――

突風が、背中を押した。

視界が一気に上がる。

「わああッ!? 空!? なんで!?」

地面が遠ざかる。
解放軍の構成員たちの叫びが、下で遠くなる。

風が巻く。優しく。ふわりと、浮かぶように。

(……は?)

一瞬、錯覚した。

何かの個性? 罠?
それとも――……助けられた……?

「……この個性……オレを守ったのか?」

思わず、口にしていた。

けれど空には誰の姿もなくて、
答えもないまま、ただ風だけが吹いていた。

(……いや、待て。いやいや……そんなことある?)

あまりに現実味がなくて、しばらく呆然と浮いていた。

やがて、自分の体がゆっくりと地に下ろされるのを感じながら、
Mr.コンプレスはぽつりと呟いた。

 

「……いや、これって……もしかして、借りが増えてる……?」

 

空に問いかけるように。

でも、風はやっぱり何も言わなかった。
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