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【ヒロアカ】re:Hero

第19章 交差する影、歪む真実



人気のない裏通り。
息が白くなるほど冷たい空気の中で、私はただスマホを見つめていた。

通知はない。
でも、わかっている。
この時間になれば、きっと“あの番号”から連絡が入る。

私は、自分からは何もできない。
ただ、呼ばれるのを待つだけ。
その関係が、何よりも痛かった。

そして、予想通り。
小さく震えるような振動と共に、画面に《非通知着信》の文字が浮かぶ。

通話を繋げると、すぐに声が響いた。

「進捗を」

たったそれだけの、機械のような声。

『……本日、異能解放軍の構成員と接触。
街中での事故をきっかけに個性を使用、
それを見た人物より、“招かれる形”で勧誘を受けました』

「状況は」

『名前・階級・人数、すべて不明。
信頼獲得前の段階です。接触者は末端と推測されます』

返事はない。

通話の向こうからは、声すらしばらく返ってこない。
けれど、その“沈黙”が、なによりも重たかった。

やがて、再び言葉が落ちてくる。

「次の段階へ進め。上層の情報を最優先とする。
必要に応じて、個性の使用も許可する。
繰り返すが――これは“君の意思による協力”だ」

それはまるで“逃げ道を自分で塞げ”という命令だった。

『……了解しました』

通話は、応答の直後にぷつりと切れた。

画面には「通話終了」の表示だけが残っている。

(私の意思……?)

そう問いかけるように、スマホを伏せた手が少しだけ震えた。

それでも私は、
その手をぎゅっと握りしめて前を向く。

(私は、彼のそばに戻るためにここにいる)

その想いだけは、
誰にも踏みつけさせない。
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