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【ヒロアカ】re:Hero

第19章 交差する影、歪む真実


ホークスside


「……俺も、まじで好きだよ」


そう言って、スマホをそっと伏せた。

小さく、通話終了の表示が消える。


(……お前、今それ言うかよ……)


息をつきながら、ソファにぐったりともたれかかる。
背もたれに沈んだ肩が、思った以上に重かった。

いつもの感覚――背中にあった“羽根”は、今はもう、ない。
ふと手を伸ばしても、そこには空気しかない。
でも、今。
彼女の言葉だけが、確かにそこに触れていた。


『……好きなのは、啓悟だけだよ』


何度も言い合ってきた。
冗談めかして、甘く、優しく、時に真剣に。

でも――
今の「好き」は、どれとも違った。

きっと彼女も、不安でいっぱいだったはずだ。
自分の無事を確かめるだけで泣きそうだったあいつが、
それでも震える声で、“言葉”を選んでくれた。



(……信じてくれて、ありがとな)



焼け落ちた羽根。
今の自分は、ヒーローとしては“欠けた存在”かもしれない。
飛ぶことも、守ることも、思うようにはできない。

だけど、あの言葉で――
一瞬だけ、羽ばたけた気がした。


「……ったく、あいつほんと反則」


ぽつりと独り言。
あたたかさが、胸の奥にじんわりと広がっていく。

窓の外では風が吹いている。
飛べない空は、いつもより少し遠く見えた。

けれど、
彼女が自分の名を呼ぶなら。
彼女が、好きだと伝えてくれるなら。


「……また、ちゃんと飛べるようにならなきゃな」


小さく笑って、膝の上にスマホを置いた。

画面には、彼女の名前が残っている。



それだけで、
この不自由な世界の中でも、ちゃんと“生きていける気がした”。
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