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【ヒロアカ】re:Hero

第19章 交差する影、歪む真実




エンデヴァーさんを背後に庇い、一歩踏み出す。

羽根はほとんど燃え落ちて、右腕は痺れている。

けど、いま俺が立たなきゃ、この場は守れない。

 

「……お前、本当は何を考えてるんだ?」

荼毘の冷たい視線に、言葉を飲み込む。

俺が知っている“あいつ”の言葉とは違う。
何か、裏がある気がしてならなかった。

 

“ヴィラン連合”に潜入する身として、
俺はいつだって警戒心を持っている。
相手が味方か敵か、簡単に見抜けるほど甘くはない。

 

「知っていることは多いはずだろうが、
今日の“お前”は――どこか違う」

 

荼毘は相変わらずの余裕を見せているけれど、
その奥の黒い何かが、俺の心をざわつかせる。

 

「……逃げさせると思うなよ」

声を絞り出すように低く言った。

スピードも羽根も、今はいつもの力の半分にも満たない。
けれど、立ちはだかることだけはできる。

 

「いい目をしているな……」

荼毘の笑みは、退屈を紛らわす玩具を見つけた子供のようで。

だが、その背後に潜む影は、俺の感情を揺さぶった。

 

“何かがおかしい。”

 

その刹那、屋上に轟音が響く。

「なあなあ、面白そうなことやってんな!」

 

振り向けば、白銀の髪が風に舞い、俊敏に飛び降りてきた――プロヒーロー、ミルコ。

 

「今回は見逃すわけにいかねえな」

荼毘は小さく息をつき、紫煙のようなワープを放つ。

 

「じゃあな。またな、"轟 炎司'」

煙とともに姿を消した荼毘。

 

俺は拳を握り締め、まだ晴れぬ胸の内を押し込めた。

“彼の言葉”は、本当に信じていいのか?

だがいまは目の前の戦いに集中するしかない。

 

「……助かりました、ミルコさん」

「あぁ、ふたりが無事で良かったよ」

ミルコの笑顔が少しだけ俺の重圧を和らげた。

 

終わりじゃない。まだ、これからだ。

守るべきもののために――何度だって飛ぶ。
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