第19章 交差する影、歪む真実
ホークスside
ハイエンドが崩れ落ちたのを見届けた時、心臓がまだ跳ねていた。
視界の端、血に染まった背中がゆっくりと立ち上がる。
ふらつきながらも――それでも、誇りを背負ったまま。
右手を高く掲げる姿は、間違いなく“象徴”の代わりを背負った、今のNo.1だった。
「エンデヴァーさん……!」
思わず駆け寄って、ぐらついたその身体を支える。
肩が熱かった。息も荒い。顔には裂傷、炎に焼かれた皮膚。満身創痍って言葉すら軽く思えるほどの状態だった。
「……大丈夫ですか」
聞いた自分の声が、思ったよりも震えていた。
この人は、“俺の憧れ”だった。
自分なんかが支えていいのか――そう思うくらいの、でかい背中だった。
だからこそ、今。
ポケットに手を入れて、あの小さな“願い”を取り出す。
「エンデヴァーさん……口、開けてもらっていいですか」
エンデヴァーが少し眉をひそめて俺を見た。
「……なんだ、それは」
手のひらに載せた、透き通った結晶。
それをそっと、差し出す。
「大切な人が作ったんです。俺の、“彼女”が」
「騙されたと思って、噛んでみてください。きっと……少しは、楽になりますから」
信じてる。
彼女の“想い”は、届く。届かせてみせる。
それを噛み砕くように伝えた時だった。
「……へぇ」
空気を裂くように、低く乾いた声が背後から響く。
振り返ると、そこには真っ黒なコートに身を包んだ、黒髪の男――荼毘。
薄く笑ったその顔が、ふたりをまっすぐ見つめていた。
「いろいろ想定外なんだが……」
「はじめまして、かな。エンデヴァー」
――静かに、冷たく。
新たな火種が、そこに立っていた。