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【ヒロアカ】re:Hero

第19章 交差する影、歪む真実




『止めないで……!彼が……殺されるなんて……!』


震える手が必死に胸の前の空間を歪ませる。


どうしても、どうしても――行かなきゃ、あの人の元へ。


「星野、頼むから、落ち着くんだ……!」


相澤先生の声は震えていない。冷静で、揺るがない。

必死に掴むその手が、私の肩に強く触れる。


『行かなきゃ……行かなきゃ……!』


涙が頬を伝い、視界が滲んでいく。


「だからこそ、冷静でいろ!」

「個性を暴走させたら、お前自身が壊れてしまう」

「でも、私には――私には、あの二人を助けられるんです!」


胸の奥から湧き上がる叫びが、声となって震える。


『助けたい……守りたい……』


その想いが切実すぎて、声が震え、涙声になる。

それでも、先生は一歩も引かない。


「お前の気持ちは誰よりも分かっている」

「だが、あいつを…"ホークス"を信じろ」


その言葉が胸に響く前に、



「想花さん……お願いです、落ち着いて」

ヤオモモの声が、そっと私の背中を包んだ。

振り返ると、彼女は静かにポケットから小さな布を取り出す。


「これで……」


言葉はなくても、伝わる優しさ。

その布がそっと私の口元に触れた瞬間、


『…っ、な、何を……』


抗おうとする力はじわじわと失われていく。




胸の奥でただ一つ、


(……啓悟……死なないで……)


その想いだけが燻り続けて、世界がゆっくりとぼやけていった。

最後に届いたのは、ヤオモモの穏やかな声。


「無理はしないで……私たちもそばにいますから……」


その言葉がまるで温かな光となり、暗い闇の中に染み渡った。
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