• テキストサイズ

【ヒロアカ】re:Hero

第19章 交差する影、歪む真実



画面の中で、風と炎が交差する。

 

破壊された建物、黒煙を吐きながら倒れるビル。
すでに街の形はわからなくなっていて、空も地面も、赤く染まっていた。

その中で――彼らは戦っていた。

エンデヴァーと、ホークス。

 

《現場は福岡市中心部……現在、確認されている被害は――》

《あの個体は、従来の脳無とは明らかに異なる反応を示しており――》

《“象徴の不在”が叫ばれる今、この状況に国民の不安が――》

アナウンサーの声は、刻一刻と切迫していく。

現場にいる人々の叫び声、逃げ惑う足音。
それを覆い隠すような爆発音と、地鳴り。

テレビ越しなのに、心臓の奥がじわじわと熱を持つみたいだった。

 

『……』

思わず手に力が入る。

目が離せなかった。

だって、そこにいるのは――彼だったから。

 

赤い羽が裂ける。
風が唸り、空気が割れた。

それでも彼は、あの人は、笑っていた。

ふざけてるように見えるその動きも、
全力で誰かを守るための手段だって、私は知ってる。

……でも。

だからこそ、怖かった。

 

ほんの一瞬でも、バランスを崩せば。

ほんの一撃でも、遅れれば――

 

『……』

息が詰まる。

その時、すぐ隣にいた焦凍が、そっと手を差し出してくれた。

私はその手を、ぎゅっと握った。

 

彼もきっと、今、心をぐらぐら揺らしている。
自分の父親が、あの場で命をかけて戦ってるんだから。

それでも、彼はテレビを見つめていた。

真っすぐに、まるで――見届けるように。

 

『……ありがとう』

小さく呟いて、私も彼の手を握り返す。

そうでもしないと、泣いてしまいそうだったから。

 

どうか。

どうか、ふたりとも。

その命を、守って。

……その願いが、届きますように。
/ 664ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp