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【ヒロアカ】re:Hero

第19章 交差する影、歪む真実


想花side

放課後の寮の談話室は、ほんのりあたたかくて。
ソファに座ったまま、ぼんやりとカップを揺らしていた。

カーテン越しに差し込む夕方の光と、誰かの笑い声。
それが混ざって、胸の奥まで緩むような時間だった。

『……ふぅ』

自然と漏れた小さな息に、近くにいたヤオモモが微笑む。

「お疲れさまです、想花さん。今日も一日頑張りましたね」

『うん……ありがとう、ヤオモモも』

テレビでは何気ないバラエティ番組が流れてて、
テーブルにはクッキーの袋と、何杯目かの紅茶。

ごく普通で、でもちゃんと幸せな夕方だった――その時だった。

 

「……え、なに、今、音止まった?」

三奈ちゃんが首をかしげたその直後。

突然、テレビの画面がパッと切り替わる。

――ピピッ、という警報音とともに。

《……緊急速報です。福岡市中心部にて、正体不明の個体による襲撃が発生しました》

『……え』

目の前に映ったのは、
壊れたビル、逃げ惑う人々、そして。

その中心で、爆風の中に浮かぶ、黒く異形な姿――

『脳無……?』

その言葉を呟いた瞬間、
画面に飛び込んできたのは、巨大な火柱とともに現れた背中。

轟くような炎をまとって、その脳無に向かっていく姿。
それは誰がどう見ても、炎のナンバーワン――

《確認できるのはエンデヴァー。そして、もうひとり――》

カメラが少し引いて、映したもうひとつの翼。

猛禽のような赤い羽が、強い風を巻き起こしていた。

 

『……ホークス……』

何か言葉を探したけど、うまく出てこなかった。

彼は――啓悟は、
その場にいるすべてを支えるように、素早く動き、空を舞っていた。

重たくのしかかる敵の猛攻を、まるで軽やかにすり抜けるように。

だけど私は知ってる。
その笑顔の裏に、どれだけの覚悟があるかってことも。

談話室の空気が変わっていた。

誰もがテレビにくぎ付けで、誰もが言葉を失ってた。

でも、私は。

『……無事でいて、ね……』

願うように、そっと胸の前で手を組んだ。

たったひとつの、強くて静かな願いを込めて。

 

――どうか、彼が、彼らが。

“ヒーロー”であろうとするその瞬間を、
ちゃんと、守り切れますように。
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