第19章 交差する影、歪む真実
ホークスside
場所は福岡、駅前の雑居ビルの15階。
焼鳥屋の奥の、少し古びた個室だった。
木の格子越しに、かすかに店内のざわめきが聞こえる。
けど、ここだけは、妙に静かだった。
テーブルを挟んで向かいに座るのは、炎のナンバーワンヒーロー――エンデヴァーさん。
「わざわざすみません、こんなとこまで来てもらって」
俺は笑いながら、卓上の串を軽く指差す。
「ここ、焼鳥うまいんですよ。緊張せず、肩の力抜いてもらえればなって」
エンデヴァーさんは言葉を返さない。ただじっと、俺の言葉の裏を探るように目を細める。
けど俺は、あくまで軽く。あくまで、余計な疑いを持たれないように。
「最近、いろんな地方で“脳無っぽいの見た”って報告が出てて。
デマも混じってると思うんですけど、数が多すぎてちょっと気になってるんです」
焼鳥の串を回しながら、目線を落とす。
――言葉は慎重に。核心に近づきすぎないように。
「どれも決定打はないですし、
誰かが世間の不安を煽るために流してるだけかもしれませんけどね」
“あくまで俺が気にしてるだけ”という建前で。
「ただ……動きがあるなら、そろそろ“来る”気がしてて。
警戒はしといた方がいいかなって」
その瞬間――
バチン、と音を立てて、個室の外の空気が張りつめた気がした。
……いや、違う。
張りつめたんじゃない。裂けたんだ。
俺はとっさに振り返る。
直後、視界を突き破るように、“何か”の巨影が窓の外をかすめた。
「……!」
エンデヴァーさんも立ち上がる。
俺もすぐに羽を開き、立ち上がる。
けどその姿を見た瞬間、思わず一瞬、息が詰まった。
あれは……脳無じゃない。
“あんなの聞いてない”。
異様に発達した筋肉。妙に知性を感じさせる動き。
まるで――俺らを“狙って”ここに来たみたいな、そんな目をしてた。
「っ、マジかよ……!」
歯噛みする俺の横で、エンデヴァーさんの全身に、炎が灯る。
焼鳥の煙とは比べ物にならない熱が、個室を満たす。
ガガンッ!
次の瞬間、窓ガラスが砕け散る音が響いた。
ハイエンド――
“知らされてなかった”恐ろしい兵器が、俺たちの目の前に現れた。
「……遊びに来るって、そういう意味かよ……」
小さく呟いた声が、煙にかき消された。
そして、戦いが始まる。