第19章 交差する影、歪む真実
階段を降りて、寮の一階――談話室に足を踏み入れた瞬間。
「「きゃーーっ!!」」
大きな歓声と笑い声に、私は思わず立ち止まった。
テレビの前にぎゅっと集まったみんなの背中。
その中央に、映っていたのは――
ヒーロー姿の彼、ホークスだった。
『え……?』
「おーっ!今ちょうどホークスやってるとこ!」
「なにしてんの〜想花、見なきゃ損だよ!!」
振り向いた三奈ちゃんが笑いながら手招きする。
慌てて駆け寄って、みんなの後ろから画面を覗き込んだ。
そこではちょうど、啓悟がマイクを受け取っていた。
少し肩の力を抜いたような飄々とした笑顔。
だけど、その口から出た言葉は――
「俺より成果出してない人が、なぁに安パイきってんですか〜」
「もっとヒーローらしいこと言ってくださいよ。……さぁ、お次どうぞ。支持率俺以下No.1」
「うわ、煽ってる……」
「えぐ。相変わらず自由すぎんだろ」
「……っていうか想花、彼氏すごいこと言ってるけど!?」
次々に飛んでくる声と、
なぜか一斉に向けられる、私へのジト目の視線。
『えっ、な、なんでみんな私の方見るの!?』
「だって、ねぇ〜??」
「彼女でしょ? ねぇ〜??」
『いやいやいや、本人に言ってください!!』
思わず両手をわたわた振ってごまかしながら、その場をそっと離脱する。
最後にちらりと見たテレビの中で、
彼は相変わらず、どこ吹く風といった顔で笑っていた。
――ほんと、もう。
いつだって、油断ならないんだから。
でもそのくせ、ちゃんと目が離せないんだよ。
その夜、スマホにふいに届いた彼からのメッセージ。
『テレビ見たー?
俺格好良かったでしょー?』
思わず私はふっと笑ってしまう。
明るく軽やかなその一言が、今日の騒がしさを優しく包み込んだ。