第19章 交差する影、歪む真実
壊理ちゃんが私の腕の中で笑ってくれる。
それだけで胸がいっぱいになって、言葉がうまく出てこなかった。
そのまま私が膝を折ってしゃがむと、壊理ちゃんはほっとしたようにもう一度抱きついてきて、
私はそっとその背中を撫でる。
まるで、ほんとうに――妹みたいだった。
「……なんか、仲良しさんなんだね」
ふと、そばからお茶子ちゃんの声がする。
顔を上げると、彼女と梅雨ちゃんが不思議そうな表情で私たちを見ていた。
「文化祭のとき、少し話してたのは見たけど……あれだけでここまで懐かれるなんて、ちょっとびっくり」
「そういえば……天喰先輩も言ってたけど、前の任務には想花ちゃんっていなかったはずよね?」
でも誰も、それ以上は踏み込まなかった。
壊理ちゃんが私の手を握って離さなかったから――
そして私もまた、その手を離したくなかった。
「なんかさ、」と耳郎ちゃんが笑って言った。
「髪色似てるし、雰囲気もどこか姉妹っぽいんだよな〜って、思ってた」
「わかるかも!」と葉隠ちゃんも頷く。
「なんかこう……あったかいっていうか、安心する感じ!」
その言葉に、壊理ちゃんが「えへへ」と笑って、少し恥ずかしそうに顔をうずめた。
私はその小さな頭を撫でながら、
みんなのやさしい空気がありがたくて、胸がきゅっとなった。
でもその中で、ほんの一瞬だけ、視線を感じた。
そっと顔を上げると、天喰先輩が、
誰にも気づかれないような静かな目で、こちらを見ていた。
まるで――何かに気づいているような、そんな目だった。
でもそれも、
私と壊理ちゃんが“また会えた”という事実の前では、きっと小さなことでしかない。