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【ヒロアカ】re:Hero

第18章 きみの隣、それがすべて



文化祭が終わりを迎えて、
放送が「閉会です」と静かに告げたその瞬間。
拍手と歓声がまたひと波、会場に広がった。

その中で、俺はひとりだけ、少し外れた場所にいた。

制服姿に戻った生徒たちが、余韻を楽しむように笑っていて、
その中心には、やっぱり――彼女がいた。


少し前までドレス姿でステージの上に立ってたなんて思えんくらい、
今はいつもの彼女で。

でも、その頬はほんのり赤く、
目元には疲れがにじんでる。

……ま、人に囲まれすぎやろ、そりゃ。

と思った矢先だった。


彼女が、目を合わせて、
こっちに向かって駆けてきた。


『啓悟っーー!』
 

小走りに近づいてくるその姿を見て、
俺は自然と笑ってしまう。

 

「よー、ミスコン女王さま。ずいぶんモテとったやん?」

彼女は少しむくれて、肩を落とすように言った。

『……なんか、いろいろ聞かれすぎて疲れた』

「まー、そりゃそうなるやろ。
 “ホークスがエスコートしてた”ってだけで、何人気ぃ失いかけたと思っとるん?」

『その張本人が言わないで』

ぷいっとそっぽを向くのが、またかわいい。

……けど。

 

俺の胸の奥には、ずっと、さっきの着信が引っかかってた。

このあと、あの場所に向かわないといけん。
どんな顔して、どんな言葉を交わすことになるかなんて、想像するだけで嫌になる。

せっかくこんな楽しい時間の終わりに――
ほんの少しだけでも彼女と過ごせると思ったのに。

 

なのに、どうしてよりによって今夜なんかに。

 

『……なにかあった?』

彼女が、じっと俺を見上げる。

俺の変化に、すぐ気づくんやけん……ほんと鋭いよな。

 

「いや、なんも。ちょっと、仕事の連絡が入ってね」

『そっか』

少しだけ寂しそうに見えたその横顔に、
ぎゅっと手を伸ばしたくなった。

でも、今は。

「あとちょっとだけ、一緒におれる?」

『……うん』

たった一言が、胸にやさしく落ちる。

ほんとうに、
ほんとうに、こんな時間がずっと続けばいいのに――
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