第18章 きみの隣、それがすべて
ホークスside
俺が舞台袖からそれを見ていたのは、
ほんの数分のはずなのに、
まるで永遠みたいだった。
スポットライトの下、
堂々とステージに立つあいつは、
緊張なんて感じさせないくらいに、笑ってた。
きれいなドレスを揺らして、
誰よりもまっすぐに、あの場所に立ってた。
……いや、ちがうな。
“まっすぐ”っていうより、“やさしく”、だった。
ふと目線を動かした彼女が、
前列にいた壊理ちゃんを見つけて、微笑む。
「おいで」って手を差し出した瞬間、
会場の空気が、ふっと変わったのがわかった。
壊理ちゃんの手を取って、
「一緒にお姫様になろっか」って――
その瞬間だった。
彼女の個性が、ふわっとあたりを包み込む。
壊理ちゃんの服が、
あっという間にきらきらのドレスに変わって、
まるで物語の中のワンシーンみたいな光景がそこに広がってた。
……これ、反則やん。
声に出そうになったけど、
なんかもう、出なかった。
誰もが言葉を失って、
固唾を呑んで見守ってる中で、
あいつはまっすぐ前を向いて言った。
「来てくれてありがとう」
「素敵な思い出になりますように」――って。
背中から翼を出した彼女が、空に舞い上がる。
太陽を受けて煌めくその姿が、やけに鮮明で。
……あぁ、そうか。
ほんとに、自由に飛べるようになったんだなって。
上空で、ふわりと腕を広げた彼女が、
やさしい“願い”をばらまくみたいに、
光の花を、会場中に降らせた。
それはもう、きれいで、
やさしくて、
ずるくて、
……なんか、もう、完璧だった。
牽制しようとか、俺のものだって見せつけようとか、
そういうのが全部、ちっさく感じるくらい。
……逆だな。
こんなん見せられたらさ、
こっちの方が惚れ直すっちゃけど。
どーすんのよ、これ。
ほんと――
最高に、困るくらい。
おまえ、やっぱとんでもないわ。