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【ヒロアカ】re:Hero

第18章 きみの隣、それがすべて



ステージの光が、私のドレスの裾に反射してきらめく。

深呼吸をひとつ。
私はまっすぐに前を向いて、凛とした姿勢でステージの中心に立った。

たくさんの視線が集まっているのがわかる。
でも、怖くない。
だって――あの人が、背中を押してくれたから。

ゆっくりと笑顔を浮かべる。
優しく、届くように、温かく。

 

視線を巡らせていたそのとき――
ステージ前の客席、最前列の方に、見慣れた小さな姿を見つけた。

壊理ちゃんだ。

私は、ふわりと微笑んで、手を軽く差し出した。

『――壊理ちゃん、おいで?』

びっくりしたように目を見開いて、でも少しずつ立ち上がって、
おそるおそるステージに上がってくるその姿が、とても可愛らしかった。

手を取って、そっと顔を近づける。

『一緒に、お姫様になろっか』

 

次の瞬間、私の“想願”がふわりと力を帯びる。

やさしい光が壊理ちゃんを包み、
真っ白なワンピースは、花びらのように広がるパステルカラーのドレスへと変わっていった。

会場がどよめきに包まれる。

小さな子が、舞台の上でまるで絵本から抜け出したみたいに変わっていく様子に、
目を奪われた誰もが、息をのんでいた。

でも私は、ただ壊理ちゃんの手をそっと握って、笑った。

 

『今日は、こうしてここに来てくれて、ほんとうにありがとう。
みんなの中に、今日という日が――
きらきらした思い出として、残ってくれたら嬉しいです』

 

言葉を結ぶと同時に、私はそっと背中に力を込める。

“想願”が応えるように、光が集まり、
背中から大きな――翼が、ふわりと現れた。

 

『それじゃあ、ちょっとだけ。魔法みたいな、おまけを――』

そう告げて、私はそっと空へと舞い上がる。

 

青空に向かって、ぐんと舞い上がっていくと、
高く高く、光の中で、両手を広げる。

 

“願う”。
今日が、優しさに包まれた日になりますように。

私の中から放たれた想いが、無数の小さな花の結晶になって、
ステージ上――観客席の上――
ぜんぶを、優しく、包みこむように降りそそいでいった。

 

まるで、空が祝福しているみたいだった。
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