第18章 きみの隣、それがすべて
想花side
ステージ裏に戻った瞬間、
一気に現実に引き戻された。
『……ねぇ、どういうこと!?!?』
緊張が解けきる前に、私は啓悟の袖を掴んで問い詰めた。
『なんであなたがここにいて、しかもエスコートしてるの!?
スーツまで着てるし……会場、完全に騒然だったよ!?!?』
問いかけた声は、若干裏返っていた。
周囲のスタッフもソワソワしてて、誰もが「本当にホークスだったんだ……」と確信してる空気が伝わってくる。
でもそんな私のテンパりを前にして、啓悟はというと――
「え、なんでって……」
と、わざとらしく首を傾けて、
「一緒に歩きたかったから、やけど?」
さらっと、何でもないように言った。
『……そ、それだけ!?』
「それだけっちゃけど。
おまえ、めっちゃ綺麗やったし。
……それ、みんなに見せたかっただけやもん」
にっこり笑う彼に、もう何も言い返せなかった。
というか、言葉が出なかった。
「それじゃ、次はアピールタイムやね」
そう言って、彼は軽く背中を押してくる。
まるでさっきの騒ぎなんて何もなかったかのように、いつもの調子で。
でも。
その手の温度だけは、少しだけ、あたたかくて。
その一押しに、私はそっと頷いた。
外から聞こえてくる司会の声。
「それでは、出場者の皆さんのアピールタイムに移ります!
トップバッターは、先ほど話題沸騰の……1年A組、星野 想花さんです!!」
会場がざわめき、拍手が上がる。
啓悟が小さく背中に声をかけた。
「……行っといで。おまえの番やけん」
私は一歩、また一歩とステージへと向かう。
ふと背後を振り返れば、
啓悟が袖から、変わらぬ笑みで手を振っていた。
その笑顔が、背中を押してくれる。
私は前を向いた。
ここからが――本番だ。