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【ヒロアカ】re:Hero

第18章 きみの隣、それがすべて



手を繋いで歩く文化祭の賑やかな出店。
啓悟の翼が丸見えで、周りの視線がこっちに向いているのはちゃんとわかってる。

『ねぇ、啓悟。“それ”丸見えだけど、バレない…?』

不安そうにそう呟く私に、彼は飄々とした声で答えた。

「まぁ、翼折れんしな〜…それにもうばれてもいいかなって」

え、ばれてもいいの?って思わず聞き返すけど、彼は理由を教えてくれない。
代わりに、ニヤリと意味ありげに笑うだけ。

「じゃなかったら、今日ここにおらんて。
それに……別の目的もあって来てるからね」

言葉の意味をじらされながらも、彼は近くのわたあめ屋さんの前で足を止める。

「ほら、あーん」

そう言いながら、ふわふわのわたあめをそっと私の口元に差し出す。

その距離にびっくりして顔が熱くなるけど、

「おれからはいやとー?」

彼の少し甘えた可愛い声に、胸の奥がきゅっと締め付けられる。

小さく「ううん」って答えながら、口に運ぶわたあめはあまくて、そしてあったかい。
頬が自然と赤くなって、なんだか息まで甘くなる気がした。

そんな自分を誤魔化すように視線を落とした瞬間――

「あー!!!想花が彼氏とイチャついてるー!」
「きゃあーーー!あーんだって!♡」

弾けるような声に、思わず肩がびくんと跳ねる。

声のほうを向けば、少し離れた場所から三奈ちゃんとお茶子ちゃんが、こっちに手を振っていた。
目をまんまるにして笑いながら、明らかに面白がってる。

『……う、うそ……見られてた……』

一気に顔が熱くなって、わたしは恥ずかしさで固まる。
まるでフリーズしたみたいに、ぴたっと動けなくなったその隣で――

「……ふふっ」

啓悟が、くすっと喉の奥で笑った。
横目でちらっと見れば、目尻をゆるめた彼が、まるで待ってましたとばかりにニヤリと笑っている。

(……あ、これ絶対なにか企んでる顔)

ぞわり、と背中を冷たい何かが這うような感覚がして、私は思わず睨むように彼を見上げた。

『………なにか企んでるでしょ』

私の問いかけに、啓悟は笑ったまま目を逸らす。
その横顔が、なんだかやけに満足げで、余裕たっぷりで――

「さぁ?何のことかな〜?」

そうとぼける彼の翼が、さっきよりもずっと堂々と広がっていて。
周囲の視線を集めるのを、まるでわざと楽しんでるみたいだった。
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