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【ヒロアカ】re:Hero

第18章 きみの隣、それがすべて



ほんの少しだけ足を止める。
こんなふうに“会いに行く”の、なんだか緊張する。
でも……今日はちょっと、仕掛けてみたくなった。

個性で声を少し変えて、いつもより少しトーンを落として。
色っぽく――でも、ふざけ半分で。

『おにーさん、一人なら……一緒に回らん?』

背後からそっと囁いたその瞬間、
彼の背中がぴくんと跳ねた。

「……ッ、え?」

肩越しに振り返ると、予想どおり、彼の目が少し見開かれてる。

「っ……な、なんや、どしたん、え、誰……」

戸惑いながら私の姿を見た彼は、一瞬きょとんとしたあと――
ふっと目を細めて笑った。

「……なーんや、びっくりさせんなって、想花」

私もくすっと笑って、声を戻す。

『ふふ、分かりやす過ぎてさ、ちょっと意地悪したくなったの』

「心臓止まるかと思ったし。てか声色まで博多寄せって、ずるか〜……!」

『焦った?』

「焦ったどころじゃなかったっちゃん……てかもう、反則やろそんなん」

帽子のつばを少し持ち上げながら、彼は苦笑まじりに目を細めて――
それでも、どこか照れくさそうな顔で言った。

「……で、どうする?
 今日、俺と一緒に文化祭――まわってくれる?」

 

私はその言葉に、少しだけ視線を落として、そっと尋ねる。

『……ほんとに、一緒に回っていいの?』

あんなに連絡が取れなかった日々を思い出して、
まるで夢みたいで、まだ少し怖かったから。

彼はそんな私の想いを、すべて受け止めるように、ゆっくりと頷いた。

「……あたりまえやん。むしろ、俺から頼むっちゃけど?」

そして、まっすぐな瞳で微笑んでくれた。

その笑顔に、胸がいっぱいになって。
私は言葉にできない想いを、ぎゅっと握った手に込めるように頷いた。
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