第18章 きみの隣、それがすべて
――文化祭・当日
ドン――ッ。
鳴り響くスピーカーの低音が、ステージの床を揺らす。
会場はすでに満員。体育館の天井が割れそうなくらいの歓声に包まれていた。
『……やば……本当に、始まるんだ』
ステージ袖で仲間たちと目を合わせる。
三奈ちゃんがグッと親指を立て、上鳴くんがベースを背負いながらニヤッと笑った。
耳を澄ませば、ジローちゃんのギターの音。
勝己のドラムスティックが、軽快にリズムを刻む。
そして、曲が――始まる。
「1・2・3・4!!」
舞台の幕が開き、まばゆい照明が一斉に点灯した。
観客のどよめき、色とりどりのスティックライトが波のように揺れる。
(……いこう)
踏み出す一歩は、もう怖くなかった。
ヒーローとして、雄英高校の生徒として、
そして、ここに“今”を生きている私として――
私は、精一杯の笑顔でステップを踏み出した。
ジローちゃんのギターが跳ね、上鳴くんの音がそれに重なる。
勝己のドラムは、まるで心臓の音みたいに力強くて。
そこに乗せるのは、私たちのダンス。
三奈ちゃんを中心に、リズムに合わせて全員の足がぴたりと揃っていく。
舞台袖では八百万さんがスポットのタイミングを指示し、
切島くんと砂藤くんが照明のギミックを完璧に操っていた。
『いっくよー!』
センターに立って、回った私の視界に――
客席でスティックライトを振るたくさんの人たち、
そして、最前列でこっそり変装して見上げてくれている、彼の姿が一瞬映った。
その瞬間。
心臓の音が、音楽とぴったり重なった気がした。
(……私、ちゃんとここにいるよ)
そのまま、最後のサビへ。
\──ラストォ!!/
上鳴くんの叫び声と、爆豪くんのドラムフィニッシュ。
ジローちゃんのピックが弦をかき鳴らし、照明が一気にフラッシュする。
決めポーズをとった私たちに、会場から割れんばかりの拍手と歓声!!
「「1-A最高ー!!!」」
観客の声が響く中、私たちはみんな顔を見合わせて――笑った。
汗が光に滲んで、喉がカラカラで、
だけど、こんなに“生きてる”って感じた日は、きっと初めてだった。