第18章 きみの隣、それがすべて
『……そうだ、文化祭。壊理ちゃん、来るの?』
涙が乾いたあと、私はそっと問いかけた。
壊理ちゃんはぱっと顔を明るくして、小さく両手を挙げた。
「うん!ルミリオンさんと一緒に行くの!」
「俺も今は休学中だけどね。生徒扱いにはしてもらえるから、一緒に見て回る予定なんだ」
ミリオ先輩がほがらかに笑ってそう言うと、壊理ちゃんが少し顔を上げて私を見つめた。
「ねぇ、おねえちゃんも出るの?」
『えっ?』
「ミスコン。デクさんが言ってた」
『ちょ、緑谷くんっ!?』
「えっ……あ、うん、うっかり……」
緑谷くんはポケットからスマホを取り出して、あっさりとあの“例の写真”を壊理ちゃんに見せてしまう。
「ほら、これ。すごいよね、星野さん」
「……わあああっ!!」
壊理ちゃんの目が、ぱあっと星みたいに輝いた。
「すっごくきれい……おねえちゃん、おひめさまだぁ……っ!」
『えっ、ちょ、やめてっ、それ私じゃないからっ……!ていうかなんで持ってるの!?』
「え……?だって……クラス全員、保存してるけど……?」
『全員!?!?!?』
緑谷くんの天然爆弾に、私の顔は一気に真っ赤になった。
「うふふ、おねえちゃん、すっごくかわいいよ!」
壊理ちゃんがにこにこして言ってくれるけど、私は耳まで熱くてもう無理。
『……もう、文化祭来るの禁止にするよ……っ』
「えぇぇぇえぇ!?やだー!!いくのー!!」
泣きそうな顔になる壊理ちゃんを、ミリオ先輩と緑谷くんがなだめながら笑う。
ほんわかした空気が流れて、優しい夕方の陽が、私たちの影を長く伸ばしていた。