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【ヒロアカ】re:Hero

第18章 きみの隣、それがすべて



それは、文化祭本番まであと少しという、穏やかな午後のことだった。
部屋でのんびりしていた私のスマホが鳴った。


『……緑谷くん?』

「今、ちょっとだけ時間ある? 外まで来てほしいんだ」


ふだんより少し緊張した声。

何かあったのかな、と不思議に思いながら、
私はカーディガンを羽織って寮の玄関を出た。

緑谷くんが待っていたのは、寮から少し離れた中庭の木陰。

そこにいたのは、ミリオ先輩と――壊理ちゃん。


『……!』


目の前にある光景が夢みたいで、声も出なかった。でも、壊理ちゃんは迷いなく駆け寄ってくる。


「……おねえちゃん!」


小さな腕が私の腰にぎゅっとまわる。その温もりが、張りつめていたものを一瞬で崩していく。


『壊理ちゃん……っ』

「……おねえちゃんの言ったとおりだったよ。ちゃんと……笑える世界が、待ってたよ」


その言葉に、胸がいっぱいになって、視界がにじむ。


『……そっか……そっかぁ……っ』

「ずっと……守ってくれてありがとう。……おねえちゃん、だいすき……っ」


もう、耐えきれなかった。壊理ちゃんの細い背中を抱きしめながら、声を殺して泣いた。


『私も……だいすきだよ……っ』


すぐそばで、ミリオ先輩が笑っていた。いつもの明るさの奥に、少しだけ涙を含んだ瞳。


「俺もね、君には感謝しかないよ。君がいなかったら、彼女も、僕も……ここにいなかった」

「ほんとうに、ありがとう」


その言葉が、心の奥まで染み込んでくる。

私は壊理ちゃんの髪をなでながら、静かに頷いた。


『……また、こうして会えて……ほんとうによかった』


それは、願って願って、やっと届いた答え。

涙のあとにやってきたのは、あたたかい光のような笑顔だった。
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