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【ヒロアカ】re:Hero

第18章 きみの隣、それがすべて


想花side


日に日に熱を帯びていく校内。

誰もが浮き足立ったように、笑っていて。
教室も廊下も、まるで“お祭り”そのものだった。


私はといえば、廊下を歩けば声をかけられ、教室にいれば視線を感じる。

ぜんぶ――あの、一枚の写真のせい。

 

綺麗、とか、すごいね、とか。
たくさん言葉をもらうたび、
「ありがとう」って笑うけど、
胸の奥はそわそわと落ち着かなくて。

 

今日は、どうしても一人になりたくて、
人気のない屋上に足を運んでいた。

 

『……ふぅ。あと数日、こんな感じなのかなぁ』

小さく呟いた言葉は、誰にも届かないはずだった。

……そう思ってた。

 

「……文化祭終わるまでは、大変そうだね」

 

不意に背後から聞こえた声に、肩が跳ねた。

振り返ると、少し遠慮がちに立っていたのは――緑谷くん。

 

『……あ、びっくりした。緑谷くんも、逃げてきたの?』

そう言って笑いながら、わざと明るく振る舞ってみせる。

 

『……ミスコンだけじゃなくてさ、ミスターコンテストもやればいいのに。
そしたら緑谷くん、絶対推薦してあげるよ』

 

からかうように言った私に、
緑谷くんは少し困ったように笑って、でも――

 

その目が、何かを言いたそうに揺れていた。

 

『……どうしたの?』

尋ねると、彼は言葉を選ぶようにしばらく黙ってから、
ゆっくりと、でも確信したように――こう言った。

 

「……あの日、あそこに居たのは君だよね?」



言葉が、音になるよりも早く、
私の心臓が、ドクンと跳ねた。

 

空気が、止まった。

 

(……バレた……?)

 

気づかれないはずだった。

あの場所も、あの姿も、あの力も――
全部、“別の自分”として置いてきたつもりだったのに。


でも、目の前の彼の目は、迷いなく私を見ていて。

 

……どうしてだろう。

その視線が、少しだけあたたかくて。

少しだけ――泣きたくなるほど、優しかった
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