第18章 きみの隣、それがすべて
夜の1-A寮。
窓の外には、ほんの少し文化祭のざわめきが漂ってる。
ベッドの上でスマホをいじっていると、ふと掲示板に貼られた“例の写真”が目に入る。
銀と青のグラデーションのマーメイドドレス。
メイクに着飾られた自分の姿が、誰かの手で綺麗に切り取られて、そこにあった。
(……啓悟、見たら、なんて言うかな)
想像するのは、あの人のちょっと意地悪な顔。
その想像だけで、胸がくすぐったくなる。
……そのときだった。
着信:《啓悟》
突然の着信。画面に浮かぶ名前に、息を呑む。
まさか、こんなタイミングで……!
慌ててタップした途端――
「──おまっ……なにしよーとや!?!?!?」
『……ふふっ』
いきなり飛び込んできた博多弁まじりの焦り声に、思わず笑ってしまう。
「ちょ、あれ見たけどさ!?おまえ、可愛すぎるやろ!?!?!?」
『ふふ……見つかっちゃったか』
「いやいやいや、そりゃ見つかるわ!!掲示板だけじゃねぇ、ネットスレにまで出回っとるし!!」
本気で焦ってるのが伝わってきて、顔が熱くなる。
あんなに落ち着いてる彼が、こんなに動揺してるなんて。
『……焦りすぎだよ』
「焦るっち、あんな姿……お前の可愛さがバレたぁぁ……」
沈黙のなかに、微かに照れた呼吸。
そして――
「……なぁ、想花。文化祭、本番……見に行っても、よか?」
一瞬、胸がぎゅっと鳴った。
『……うん。絶対、来てね?』
その声に、彼はふっと息をついて、
それからゆっくり、囁くように言った。
「……会えるの、楽しみにしとるけん」
画面越しでも、こんなに近くに感じられるのに。
本当に会えたら、私、きっと――
また泣いちゃうかもしれない。