第18章 きみの隣、それがすべて
案内されるまま、ねじれ先輩のあとを歩く私と焦凍。
廊下を抜けて、普段は使われていない
――特別教室のドアが目の前にあった。
「こっちこっち〜♪」
先輩が楽しそうに扉を開ける。
『えっ……ここって?』
不安がよぎる中、足を踏み入れた瞬間――
「きたきた〜!! 想花!」
バタバタと走ってきたのは、拳藤ちゃんだった。
『え、拳藤ちゃん!?』
彼女の後ろには、落ち着いた雰囲気の回原くんが控えていて、
「やっぱ本人が来ると空気変わるな。これは期待できるぞ」
なんて、さらっと褒め言葉。
でも、何がなんだか分からない。
室内には、ずらっと並んだ鏡台、衣装ラック、メイク道具。
ドレスやティアラ、ヒールがずらっと並んでいて……
(……な、なにこれ、異空間……)
「はい、これ見て♪」
拳藤ちゃんが、壁に貼られた紙を指差す。
《雄英文化祭 ミスコン出場者》
その文字とともに――
「1-B 拳藤 一佳」
「1-A 星野 想花」
しっかりと、私の名前が。
『……う、そ……!?』
呆然とする私の横で、焦凍が一歩前に出て言った。
「……決まってるみたいだな」
『ちょ、ちょっと待って!?私、出るって言ってない……!』
「推薦推薦〜♡」
ひょっこり後ろから、ねじれ先輩が笑いながら顔を出す。
「ね〜、拳藤ちゃん! “美の可能性に賭けてる”んでしょ?」
「そ! 私、想花は絶対優勝いけるって前から思ってたんだよね~!」
『いやいやいや!?ちょっと待って!?』
「しかもね、アンケートでもめっちゃ票集まってたの! “出てほしい女の子部門”!」
(うそでしょ!?)
焦りのあまり振り返ると、焦凍が静かに私を見る。
「……逃げ道はないな」
その一言で、心が折れる音がした。
――こうして、私は強制ミスコン出場という現実を受け入れるしかなくなった。