第18章 きみの隣、それがすべて
想花side
校舎の窓から差し込む柔らかな陽射しが、教室をあたたかく染めていた。
「ねえねえ見た!? 今年の文化祭、演劇やるらしいよ!」
「えっマジ!?てか俺たちのクラスも何かやるんでしょ?何やるの~?」
「お化け屋敷!絶対お化け屋敷がいいって!ほら、意外とみんなめちゃくちゃ怖がりだから!」
そんな声が飛び交う中、私は静かに自分の席に座っていた。
賑やかな笑い声。紙飛行機の舞う空気。黒板の上に書かれた「文化祭まであと15日」の文字。
(……戻ってきたんだ)
そう思うたび、胸の奥がじんわりと熱くなる。
あの、地下の暗がりとは違う。
コンクリートの冷たさじゃない、このぬくもりのある空間。
そこに私がいて、みんなの笑顔がある。
『おい、想花、おまえ最近休みがちだったくせに文化祭の準備サボんなよ!』
爆豪くんの不器用な言葉にも、なんだか笑ってしまった。
『……うん、ちゃんと手伝うよ』
自然と、そんな言葉がこぼれていた。
クラスの空気はすっかり「文化祭モード」。
この日常が、何よりの“ごほうび”に思えた。
だけど。
私の中には、まだ終わっていない想いもあって──
それでも今だけは、みんなと一緒に笑いたかった。
(……もう少しだけ、こうしていてもいいかな)
まるで、夢みたいな朝。
でも、これは確かに“現実”だった。