• テキストサイズ

【ヒロアカ】re:Hero

第17章 死穢と光の狭間で




「サー、その少女の特徴……何か覚えてませんか?」


思わず身を乗り出していた。
落ち着けと言い聞かせても、胸の奥がざわつく。


ナイトアイは静かに目を伏せたまま、少しだけ首を横に振る。


「顔は……覚えていない。
 ただ、黒い髪で……目が、とても、強かった」


言葉を選ぶように、ぽつりと続けた。


「その目だけは、焼き付いて離れない。
 あれほどの眼差しを、私は……初めて見た」


目が、強い。

それは、クラスの誰もが口にする星野さんの印象だった。

誰かを想う時。
何かを守る時。
あの人の瞳は、まっすぐで、どこまでも揺るがなかった。


(……まさか)

でも。
この胸の奥で疼く感覚が、ただの“勘”じゃない気がして――


(……でも……もし、本当に……)


込み上げてきた想いが、喉の奥で震える。


「……会いたいです。その人に」


思わず、漏れていた。
誰に聞かせるわけでもなく、ただ、心が言葉を探していた。


「ありがとうって言いたい。
 助けてもらった命を……無駄にしないって」


それが、あの人に“返せる”たったひとつの言葉だから。


傷を負って、命を削って、
それでも誰かのために力を使ってくれたその人に。

俺は、ヒーローとして――
いや、“僕自身”として、ちゃんと伝えたい。


ナイトアイは何も言わなかった。

ただ、静かに目を伏せ、
その横顔は少しだけ、穏やかだった。


“未来が変わった人間”として――
あの奇跡の意味を、きっと誰よりも感じていたのだと思う。


その沈黙の中で、僕の心は確信に近づいていく。


星野さん。


あなたは、あの日、確かに――そこにいた。

名前も、顔も、誰にも知られないまま。
でも、壊れそうな命を抱きしめて、光を差してくれた。


僕は、忘れない。
たとえ、すれ違ったままでも。
あなたが“そこ”にいてくれたことを。

いつかまた、会えたとき。

笑って、「ありがとう」って言えるように――
僕も、もっと強くなりたいと思った。
/ 664ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp