第17章 死穢と光の狭間で
荼毘の炎が、ゆらりと立ち昇った。
白煙が視界を割る。
『……っ』
私はすぐに構える。
体は軽い。傷もない。壊理ちゃんの力で私は“壊れる前”に戻っていた。
けれど、相手は悪名高きヴィラン連合。
それも、何度も対峙したことのある4人――私の動きも癖も、ある程度知られている。
「ねぇねぇ、さっき空で抱き合ってたじゃん? あれ見て、ちょっとムカついちゃいましたぁ♡」
「出久くん……かっくいいですよねぇ」
トガが笑いながら、ナイフを舐めるように指先で転がす。
「ふぅん……完全に覚醒間近ってわけか。そりゃ、追いかける価値もある」
Mr.コンプレスは帽子の縁を押さえながら、小さな金属球を指先で弾いた。
『っ──!』
球が破裂し、中から圧縮されていた瓦礫が一斉に解放される。
四方から飛んでくるそれらを、私は空間の流れを“想願”で歪めて受け流す。
風の壁で弾き、足元の空間を一瞬たわませ、身体の軌道をわずかにずらす。
(……動きは見えてる。まだ、大丈夫)
数合の攻防。私は冷静だった。
ただ、防戦を強いられているだけ。
この4人を一度に相手にするには、どこかで決定打が要る。
力はある。けれど、人数差の不利は明白。
「やっぱやっかいだなぁ、この子……」
「そろそろ──抑え込むか」
荼毘が足元を焼き、広範囲に炎を撒き始めた。