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【ヒロアカ】re:Hero

第17章 死穢と光の狭間で



崩れた瓦礫を乗り越えながら、私は走っていた。
死穢八斎會のアジトに取り残された人たちを、助けるために

そこは、もはや“戦場の残り香”が濃く染みついた静寂だった。

けれど――風が変わった。
空気が重たく、ひどく懐かしいほどに“嫌な匂い”を連れてきた。

カツン――と、コンクリートに響く靴音。

その先に現れたのは、私の記憶に刻まれた、あの人たちだった。

「やっぱ来たじゃん、想花ちゃん」
トガヒミコが血のように赤い舌で唇をなめながら、楽しげに笑う。

「救助に向かう?そりゃアンタらしいや」
Mr.コンプレスは帽子を押さえ、優雅な動作で私を遮るように一歩踏み出す。

「計画通りとはいかねぇが……まぁ上等だ」
トゥワイスはマスクの奥で低く呟く。

「目的が変わった。それだけの話だ」

――そして、現れたのは、
焼け焦げた皮膚の奥に、“あの時”と同じ目を宿した男。

荼毘。

「本当は……壊理って子を奪うつもりだった。
けどな、オレらの前に“もうひとつの鍵”が歩いてきてくれた」

『……鍵?』

私は足を止める。
けれど、手は自然と動いていた。
コンプレスの腕を、“巻き戻すように”治してしまったあの日。

それを――彼らが、見ていないわけがなかった。

「アンタがいれば、もう壊理はいらないって話さ」
Mr.コンプレスの視線が、私の手に落ちた。

「なぁ、何回も会ってるけど……今日はちゃんと、連れてくぜ」
荼毘が一歩踏み出す。

その声は、“選択肢など存在しない”と言わんばかりの響きだった。

『……っ』

息が詰まる。

まただ。また、同じことを繰り返すつもり?

この手で人を“壊す”んじゃない。
“守る”ためにここにいるのに――

『……ふざけないで』

静かに吐き出したその言葉に、空気が震えた。

“想願”が、脈を打つように応える。
瓦礫が揺れ、足元の塵が巻き上がる。

――守るべきもののために、私は立つ。

あの日の絶望を、もう二度と繰り返さないために。

「……やっぱ、いい顔するじゃん」

トガがにやりと笑う。

「そうだよな。お前は、“壊せなかった側”の女だ」

荼毘が言う。

「でも今回は……“ちゃんと壊してやるよ”」

目の前に立ち塞がる4人。
あの夜、地獄の底で見上げた顔たち。

でも――もう、私はあのときの私じゃない。
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