第17章 死穢と光の狭間で
地面に、着地の衝撃が残る。
それでも、私はもう怯えていなかった。
すぐ隣には、緑谷くん。
その腕に、壊理ちゃんがしがみついている。
さっきまでの彼の身体は傷だらけだった。
だけど、もうそれも微塵も残っていない。。
……だって、彼女の力が確かに動いている。
私は、ふたりの前に立つ。
『……デク』
彼が、目を見開いた。
『壊理ちゃんの個性が発動してるうちは――あなたの身体は、“壊れない”』
彼の肩が、ほんの僅かに震える。
でも、その瞳は強く光っていた。
私はそっと、壊理ちゃんの方に向き直る。
『……壊理ちゃん』
『このお兄ちゃんに……力を貸してくれる?』
『あなたの中の“やさしさ”が、きっと――この怖い時間を終わらせてくれるから』
彼女は、少しだけ怯えながら、でも、うなずいた。
その小さな決意が、胸を熱くする。
『ありがとう』
私は小さく笑って、立ち上がる。
『あとは、任せたよ』
そして、駆け出す。
逆の方向へ――
取り残された命たちがいる、瓦礫の中へ。
“私には、私の守るべき場所がある。”
それを信じて、空気を切るように走った。