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【ヒロアカ】re:Hero

第17章 死穢と光の狭間で



「行こう、君も!」

ミリオ先輩が、私の手を強く引いた。

壊理ちゃんを抱きしめたまま、私はその勢いに導かれて走り出す。
すぐ背後には、緑谷くんが息を切らしながらついてくる。

 

けれど――

 

ズシャッ!!

 

「……サー!!!」

振り返る。
見たくないのに、目を逸らせなかった。

 

そこには――
治崎廻の攻撃が、ナイトアイの腹を貫いていた。

左腕はすでに千切れ、床には血が線のように広がっている。

 

『……っ……』

 

私の隣で、緑谷くんが迷うことなく治崎へ向かって飛び出していく。

 

私は立ち止まり、
そっと壊理ちゃんを胸から離した。

彼女の目をまっすぐに見つめて、微笑む。

 

『……壊理ちゃん、このお兄ちゃんと逃げて』

「……おねえちゃんは……?」

震える声に、私はそっとその髪を撫でた。

 

『大丈夫。……すぐに追いつくから、ね?』

そして、ミリオ先輩の方をちらりと見て――
壊理ちゃんにも、柔らかく伝える。

 

『それにね、このお兄ちゃん、すっごく面白くて優しい人だから……
 一緒なら、絶対に大丈夫だよ』

 

壊理ちゃんの小さな手が、名残惜しそうに私の指を掴んでくる。

でも私は、その手をそっと外し、優しく背中を押した。

 

『……壊理ちゃんをお願いします』

ミリオ先輩は、ただ真剣な眼差しで頷いてくれた。

 

私は背を向け、走り出す。

向かう先は――血に染まったナイトアイの元。

 

後ろから、壊理ちゃんの小さな呼吸が遠のいていく。

でも、そのぬくもりは今も胸の中に、しっかりと残っていた。



(あの人を……助けなきゃ)

目の前で、命が消えかけている。

私はただ、それが――

どうしようもなく、“嫌”だった。
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