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【ヒロアカ】re:Hero

第17章 死穢と光の狭間で




「……その力」

沈黙を破ったのは、ナイトアイだった。


「君は本当に、“死穢八斎會”の人間か?」


その問いに、私は答えられなかった。
でも、ナイトアイの目には、もう“敵”の色はなかった。

ただ、確かめるように――静かに、まっすぐに私を見ていた。


けれど。

 
――ズドン!!!

壁を砕くほどの轟音とともに、緑谷くんの身体が吹き飛んできた。

『……っ!』

私は反射的に、壊理ちゃんを庇うように抱きしめる。
土煙の中から、彼の姿がゆっくりと起き上がった。

ボロボロの顔。
血に濡れた拳。
それでも、まだ立とうとするその背中。

(……緑谷くん……)


そして――


粉塵の向こう。
そこに立っていたのは、昨晩、私にマスクを外して触れた“彼”ではなかった。


禍々しい圧とともに、
治崎廻が姿を現した。


音本と融合した異形の姿。
腫れ上がる肉体、脈打つ血管、
彼自身すら覆い尽くすような“再構築の暴走”。


(うそ……これが……)

胸の奥が、ぎゅうっと締め付けられた。

あのとき、
白い手袋を外して、
何も壊さずに触れてきた人。

「……全てが終わったら、それを外してやる」

静かに笑っていた、その横顔。

でも今、私の目の前に立っているのは――
“壊す”ことしか知らない、ただの怪物だった。


私はその場に立ち尽くしてしまった。
言葉も出ない。
足も動かない。

ただ、胸の中で壊理ちゃんの小さな心音が脈を打っていた。

その隣で、ナイトアイが声を張った。


「デク、ルミリオン……!
 “彼女たち”を連れて、後方へ避難しろ!!
 ここは、私が抑える」

 
たった一言。
でも、確かにその中に――

私も“守るべき者”として含まれていた。


言葉にならないほどの衝撃が、胸の奥に広がる。
でも、いまそれを噛みしめる余裕なんて、なかった。


私はただ――
壊理ちゃんの手を離さずにいた。

それだけが、今の私の全てだった。
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