第17章 死穢と光の狭間で
ナイトアイの視線が、鋭く突き刺さる。
それはもはや、疑念ではなかった。
“敵”と認識した者に向ける、容赦ない眼差し。
けれど私は、その視線を振り切って、
壊理ちゃんを抱きしめたまま、ミリオ先輩のもとへ戻った。
彼は、壁際に崩れるように倒れたまま、
目を細めてこちらを見ていた。
腹部から流れ続ける出血。
このままじゃ危ない――わかってる。
でも、いま私がここで“力”を使えば……きっと、終わる。
偽装も、立場も、全部。
それでも、私は――
『……ごめんなさい』
そう呟いて、彼の服をそっとめくり、
血が滲む傷口に手をかざした。
「……っ、!」
温かな光が、ほんのりと滲む。
掌の奥、心の底から溢れる願いが、
彼の命を、少しだけ繋ぎ止めていく。
私の“想い”が、彼を生かした。
それだけ。
「……君は……」
彼の声が、震えていた。
まるで、どこかで会ったことがあるかのように。
忘れられない何かを思い出すように。
『……っ』
声を詰まらせる私に、
壊理ちゃんが、そっと手を重ねてきた。
その手の温度が――たまらなく、愛しかった。
ふと横を向けば、
ナイトアイの目が、変わっていた。
先ほどまでの刺すような敵意は、もうなかった。
ただ、
「人を救おうとする者」だけを見つめる、
真っ直ぐな観察者の目に戻っていた。
その沈黙が、なにより雄弁だった。