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【ヒロアカ】re:Hero

第17章 死穢と光の狭間で



ミリオ先輩の拳が、鋭くクロノを打ち払った。

その一撃は、もう“透過”なんてしていなかった。
でも、それでも彼は突っ込んできた。
身体一つで。何の能力も使わずに。

その腕には血が滲んでいる。
腹部には、服の上からでもわかるほど深い傷。
それでも立ち上がって、彼は戦っていた。

(……まさか、個性……?)

胸の奥が、冷たくなった。

クロノのポケットから弾かれた、空の弾丸ケースが、床を転がる。
鈍く光るその薬莢――見覚えがあった。

(個性消去弾……!?)

もう間違いなかった。
ミリオ先輩は、すでに打たれていた。

それでも、彼は。

彼は――それでも、前に立っていた。

まるで、
私と壊理ちゃんを“庇うように”。

気づいているはずがない。
私の顔も声も、当時のものとは違う。
でも、彼の背中は私たちを覆っていた。

(どうして……)

私は喉の奥が詰まるような感覚に襲われながら、
震える壊理ちゃんの手を強く握った。

『こっちだよ、壊理ちゃん。絶対に、絶対に連れて出すから――!』

 

けれど、走り抜けようとしたその先に――
また、立ちはだかる影があった。

ドン、と靴音。
煙の向こうから現れたのは――

緑谷出久。

そしてその背後には、
冷静な瞳で状況を見つめるサー・ナイトアイ。
そして――相澤先生。

 

空気が、凍った。

私はとっさに壊理ちゃんを抱き寄せる。
震える彼女を包む腕が、わずかに揺れていた。

(ダメ……いまバレたら、全部終わる)

(でも……私はまだ、“ここ”にいたい)

逃げなきゃ。
でも――この“ヒーローの背中”から、目を逸らしたくなかった。

私はまだ――
ヒーローでいたいと思ってしまう自分に、救われていた。

それが、あまりにも、苦しかった。
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