第17章 死穢と光の狭間で
ミリオ先輩の攻撃が、勢いを増していく。
クロノの時間操作をかわし、治崎に向けて拳を振るう。
まるで、
私と壊理ちゃんを――“庇うように”。
気づかれているはずがない。
容姿も声も、あの頃とは違う。
でも彼は、間違いなく私たちの前に立っていた。
(なんで……)
私の心はぐしゃぐしゃだった。
助けたい。止めたい。支えたい。
でも、ここで個性を使えば、私は正体を知られてしまう。
(……ダメだ。今は……バレちゃいけない)
私は歯を食いしばりながら、
震える壊理ちゃんの手を握って、通路の奥へと走った。
「こっちだよ、壊理ちゃん。大丈夫、絶対に連れて出すから――!」
けれど、出口へ向かうその途中で――
再び、前方に気配が現れる。
ドン、と床を踏みしめる音。
煙の中から現れたのは――
緑の髪、真っ直ぐな目。緑谷くん。
そのすぐ後ろに、
スーツ姿のサー・ナイトアイと、
そして――あの鋭い目をした相澤先生がいた。
時間が止まったように感じた。
彼らはまだ、私に気づいていない。
でも、時間の問題だ。
私は咄嗟に壊理ちゃんを抱きしめて、後ずさった。
(……逃げなきゃ。でも……でも――)
視線を合わせられない。
心が、張り裂けそうだった。
ここにいてはいけない。
でも、ここから“逃げたくない”自分もいた。
私はまだ――
ヒーローとしてここに立っていられることに、救われていた。
それが、苦しかった。