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【ヒロアカ】re:Hero

第17章 死穢と光の狭間で




夜が深まりきったころ、部屋の隅で足元をゆっくり撫でる。
誰にも見られないように、
誰にも気づかれないように、
私は靴の底に指先を忍ばせ、小さなカバーを外す。


薄くて、指の関節ほどしかない、公安から渡された特殊携帯。
そこに、1件の通知が灯っていた。


潜入から、約二週間。
この間に知り得た情報は、全てこの携帯から公安へ送ってきた。
死穢八斎會内部の構成、動き、監視状況、壊理の所在――
それを送るたび、少しずつ自分が“冷えて”いくのを感じていた。


画面を開く。
たった数行の文面が並ぶ。


《2日後、死穢八斎會アジトへヒーローおよび警察部隊が突入》
《速やかに身を引き、発見されるな》
《目撃されれば即座に切り捨て対象となる》


そこに、「誰かを救出する」なんて言葉は、ひとつもなかった。

 
ただ、“離れろ”とだけ。

“感情”も、“意味”も、“想い”もない文章だった。

 
私は、そっと画面を伏せた。

 
(……壊理ちゃんは?
……彼らは、彼女を見捨てるの?)

答えはどこにも書かれていない。
命令と、その先にある可能性だけが押し付けられる。

 
部屋の中には、機械の光が消えた後の闇と、
ただ自分の鼓動の音だけが残っていた。
 

私は、そのまましばらく動けなかった。
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